裁判上の和解に基づく解決金は益金計上(T&Amaster)
T&Amaster2020年8月24日号より。
裁判上の和解に基づく解決金は益金計上
東京地裁、株式の取得対価の返金ではなく「損害賠償金」と判断
税務通信でも扱っていたのですが、東京地裁令和2年8月6日判決について。
解決金が、株式取得の対価となるのか、損害賠償金で益金計上なのかが論点。
TOBで株式を取得した先の会社について、不適切な会計処理が判明。
その後の取り戻しについてのバトルと、その後始末での税務処理問題という話。
まず、対象社の筆頭株主かつ代表取締役だった個人らに対して。
株式取得代金が過大になったことでの損害賠償請求を求めて出訴。
裁判上の和解成立で、被告個人らから、株式取得社が解決金を受領。
この解決金の税務申告について、どうしたかというと。
解決金を益金計上しつつ、同額を子会社株式評価損計上したが。
課税庁がこの損金処理を認めず、訴訟提起するに至ったという。
和解文書の条項では、解決金の性格について記述してあり。
取得対価が過大であることを理由とするものだとしていた。
しかし、この和解文書条項は、解決金の法的性格を明確にしておらず。
譲渡代金減額調整としての表明保証条項違反に基づく補償金請求と明示してなかった。
訴訟物においても、この趣旨での補償金請求が行われていなかった。
更に、対象株式を、売主のである株主分に限定しておらず。
元取締役なども含めた連帯債務として構成していることを踏まえると。
解決金の法的性質は、損害賠償金とみるべきであると判断している。
私見にはなりますが、今回の判決で大きかったのは、ここにあるのではないかと。
つまり、株式減額なら、解決金は売主だけに対応しないとおかしい。
しかし、全体を見渡すと、そのような法律構成で請求していないし。
請求対象者についても、異なるではないかと。
このあたり、訴訟物の問題を指摘する声があるようですが。
それはある意味で、結果論のような気がします。
いや、あくまでも私見だと強調しておきますが。
(税理士・公認会計士 濱田康宏)