市街地価格指数による土地取得費を否定した事例(平成30年7月31日裁決)
国税速報令和元年6月10日第6562号より。
■注目 非公開裁決事例
市街地価格指数は本件土地の市場価格の推移を反映したものとはいえず
これを基に土地の取得費を算出することはできないとされた事例
[平成30年7月31日仙裁(所)平30第1号]
裁決要旨は下記。
△
請求人は、亡父から相続により取得した土地(本件土地)の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費について、本件土地の取得に要した金額が不明であり実額により算出することはできないから、推計する方法によって算出せざるを得ないところ、六大都市を除く市街地価格指数を基に算出した金額(請求人主張額)は、亡父が本件土地を取得した当時の本件土地の市場価格を反映した合理的な額であるから、本件土地の取得に要した金額として取得費に算入することができる旨主張する。
しかしながら、市街地価格指数は、個別の宅地価格の変動状況を直接的に示すものということはできず、また、六大都市を除く市街地価格指数については、三大都市圏を除く政令指定都市及び県庁所在都市(県庁所在都市等)以外の調査対象都市は公表されていないところ、本件土地は県庁所在都市等に該当しない都市に所在しており、さらに、本件土地の所在する都市が調査対象都市かどうかを確認し得ないことからすれば、請求人が請求人主張額の算定に用いた六大都市を除く市街地価格指数が、本件土地の市場価格の推移を反映したものであるということはできない。
以上のことからすると、請求人主張額は、亡父が本件各土地を取得した当時の本件土地の市場価格を適切に反映したものとはいえず、本件土地の取得に要した金額として取得費に算入することはできない。(平30. 7.31 仙裁(所)平30-1)
▽
今までの否認事例は、基本、宅地比準ちゃうねんで、という話だった。
「本件各土地は六大都市以外の地域に所在するものであるから、本件各土地の地価の推移を適切に反映したものとはいえない」(平26. 3. 4 東裁(所)平25-91)
「本件土地は、請求人の父が取得した当時、宅地としての利用状況になかった」(平30. 5. 7 東裁(所)平29-119)
ところが、この裁決例では、そんなことは一切言っていない模様。
そもそも市街地価格指数を利用する方法そのものを疑問視している。
市街地価格指数は、個別の宅地の変動状況を直接的に示すわけではなく。
本土地は、県庁所在都市等に所在しない年所在で、調査対象都市か不明。
これらを理由に、市街地価格指数の利用不可と、真正面からぶった切り。
上記の裁決要旨でも確認できる通りです。
当初申告でなく、更正の請求事案ではありますが。
恐らく、多くの税理士には、衝撃的なお話になる可能性がありますね。
なお、この事案は取得費についても争点となっており。
市街地価格指数による額に、相続税加算額を加えた額だと納税者主張。
しかし、資料が出ないことから、取得費不明の事案であるとした上で。
造成費・給水管引込工事費という改良費額があって。
これが、概算取得費相当額を上回るため、これを取得費とすべしと。
結果、改良費額に相続税加算額を加えた額を取得費だと判断された。
資料がなければ、概算取得費相当額しか認めないという姿勢は。
平 8.12.20大裁 (所) 平 8-45あたりの考え方ですけれど。
最近、こちらの厳しい考え方が主流になりつつあるのでしょうか。
ただ、今回の事案については、算定方法に個別性がないことが問題。
弊所では、そもそも、市街地価格指数は使っていません。
以前、連調に、別の方法を教えて貰ったので、そちらを使っています。
今回の裁決例の判断だと、そちらは問題なさそうだなと。
ちょっと、ホッとしているところです。
(税理士・公認会計士 濱田康宏)