大阪勉強会からの税法実務情報

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合同会社の支配力基準判定に注意

合同会社の支配力基準判定に注意

 

濱田)最近読んででびっくりしたのが、消費税の特定新規設立法人判定で、合同会社の場合は、金額基準や議決権基準だけで判断するとダメだとするものです。

 

税経通信2019年5月号
「消費税の調査実例と対応」(尾崎真司)P45ー47

 

内藤)親子であるA・Bが100万円ずつ出資して、他人であるCが200万円出資している設例ですね。持分会社は、資本議決権基準ではなく、頭数議決権基準つまり社員の数により議決権が決まるのが原則でしたね。

 

濱田)はい。なので、デフォルトルールのままなら、当然にABによる過半数支配なのは、納得です。

 

白井)ただ、本事例では、定款で議決権については、出資額100万円で1議決権を有することにしているのですね。すると、確かに、ABによる過半数支配は満たしませんね(消費税法施行令25条の2第1項1号〜3号)。

 

岡野)ところが、消費税法施行令25条の2第1項4号を見ると、社員総数による判定があるのですね。3人中2人が親族等になるから、やはりダメだと。

 


消費税法施行令 第25条の2 (新規設立法人が支配される場合) 

 法第12条の3第1項に規定する他の者により新規設立法人が支配される場合として政令で定める場合は、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合とする。

 

 ◆1 当該他の者が法第12条の3第1項に規定する新規設立法人(以下この項及び第25条の4第2項において「新規設立法人」という。) の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。次号において「発行済株式等」という。) の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合

 ◆2 当該他の者及び次に掲げる者(新規設立法人が次のロからニまでに掲げる法人に該当する場合における当該新規設立法人を除く。) が新規設立法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合
  イ 当該他の者の親族等
  ロ 当該他の者(当該他の者が個人である場合には、イに掲げる当該他の者の親族等を含む。以下この号において同じ。) が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人
  ハ 当該他の者及びこれとロに規定する関係のある法人が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人
  ニ 当該他の者並びにこれとロ及びハに規定する関係のある法人が他の法人を完全に支配している場合における当該他の法人

 ◆3 当該他の者及びこれと前号イからニまでに規定する関係のある者が新規設立法人の次に掲げる議決権のいずれかにつき、その総数(当該議決権を行使することができない株主等(株主又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員その他法人の出資者をいう。次号並びに第3項及び第4項において同じ。) が有する当該議決権の数を除く。) の100分の50を超える数を有する場合
  イ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転又は現物出資に関する決議に係る議決権
  ロ 役員(法人税法第2条第15号(定義) に規定する役員をいう。以下この号において同じ。) の選任及び解任に関する決議に係る議決権
  ハ 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として法人が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
  ニ 剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権

 ◆4 当該他の者及びこれと第2号イからニまでに規定する関係のある者が新規設立法人の株主等(合名会社、合資会社又は合同会社の社員(当該新規設立法人が業務を執行する社員を定めた場合にあつては、業務を執行する社員) に限る。) の総数の半数を超える数を占める場合

 

内藤)定款で会社法の既定値を書き換えているので、うっかりしやすいのですが。恐らく、定款変更ですぐに逃げてしまえるので、特に網を広げているのでしょうね。

 

濱田)なんか、落とし穴ですよね。ビックリしました。

 

村木)合同会社の場合の支配力判定が落とし穴だということ自体は同意します。ただ、濱田さんは、何か忘れていますよね。

 

濱田)え、なんでしたっけ。村木先生に言われると、ムンクの絵のように不安になりますが。

 

岡野)法人税法施行令4条3項3号がどうなっているか、ですね。

 


法人税法施行令 第4条 (同族関係者の範囲) 

 

 3 前項各号に規定する他の会社を支配している場合とは、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合をいう。

 

 ◆1 他の会社の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。) の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合

 ◆2 他の会社の次に掲げる議決権のいずれかにつき、その総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。) の100分の50を超える数を有する場合
  イ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転又は現物出資に関する決議に係る議決権
  ロ 役員の選任及び解任に関する決議に係る議決権
  ハ 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
  ニ 剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権

 ◆3 他の会社の株主等(合名会社、合資会社又は合同会社の社員(当該他の会社が業務を執行する社員を定めた場合にあつては、業務を執行する社員) に限る。) の総数の半数を超える数を占める場合

 

白井)なるほど、こちらもそうですね。つまり、消費税法の話に止まらないわけですか。

 

内藤)もともと、消費税法の規定は、法人税法の規定を踏まえて作られたのでしょうしね。

 

村木)はい。濱田さんは、合同会社の関与先がないとの話だったのでラッキーですが、この落とし穴に気がついていない会社とその顧問税理士は少なくないでしょうね。

 

岡野)まぁ、多くの場合は、同族会社判定以外念頭にないでしょうからいいわけですが。このような限界事例だと判断を間違えてもおかしくないですね。

 

濱田)司法書士さん手動で、合同会社ブームがきている感もありますが、要注意ですね。あー怖。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏 税理士 内藤忠大 税理士 白井一馬 税理士 岡野訓 税理士 村木慎吾)


 

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