週刊税のしるべ 平成31年3月4日 第3353号
事実認定について争われた事例ではありますが、参考までに。
建物の取壊費用については、次の通達が存在しています。
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7−3−6(土地とともに取得した建物等の取壌費等)
法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7−3−6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壌しの時における帳簿価額及び取壌費用の合計額(廃材等の処分によつて得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。
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で、納税者がチャレンジをしたと。
すなわち、平成26年9月に土地建物の売買契約を締結し、同年11月に本件建物で従業員らが参加するレクリエーション会を開催。その後、本件建物が利用されたことはなく、平成27年11月に取壊し。
審査請求人は、建物の帳簿価額と取壊費用を損金に額に算入したものの、原処分庁から更正処分を受けていた。
購入後の建物をレクリエーション施設として使用している点や購入後1年超経過してから取壊しをしている点などを考慮すると、上記通達を意識した行動と取られなくもない。
さて審判所の判断はというと・・・。
「請求人が当初は更地での引渡しを求めていた上、営利法人である請求人が収益を直接生み出さない建物を従業員の福利厚生施設とする目的で全額融資で4億円以上かけて取得したとするのは合理性を欠く」と指摘。
さらに、「同施設としての利用が1回にとどまっており、電力契約等も結んでいないことなどから同施設とする目的で首都高したとはいいがたく、これら事情を総合勘案すれば、本件土地建物は取得時から建物を取り壊して土地を利用する目的であることは明らか」とした。
通達で示している「おおむね1年以内」としている期間制限については・・・。
「本件通達の定めはあくまで例示に過ぎず、建物の取壊しの開始時期が物件の取得から1年以上を経過した時点であったからといって、ただちに通達の適用が否されるものではなく、さらに請求人は『おおむね』であることを考慮していない。」として請求人の主張には理由がないとした。
(税理士 岡野 訓)