清文社から発刊した信託本を6年ぶりに改訂します。
本書の初版である「相続贈与・資産管理・事業承継対策に役立つ! 実践 一般社団法人・信託活用ハンドブック」を出版したのは2013年12月13日です。このときは、実務家の勉強仲間が大阪で集まって、一般社団法人と信託の可能性を提案し、実務家に広く知ってもらうために、著者メンバーが議論をして勉強しながら、いくつかの項目については手探りで執筆しました。それから5年が経過し、一般社団法人は広く認知され数多く設立されるようになりました。いわゆる民事信託はまだまだ一般に普及しているとはいえませんが、教育資金一括贈与信託などの制度は一般に馴染みとなり、信託に可能性を感じる実務家が増えてきたことを実感します。
税務の否認事例や悪用事例も公表されるようになり、民事信託に関する金融機関等のスタンスも徐々に明らかになりつつあります。平成30年度税制改正では、同族理事が支配する一般社団法人と一般財団法人には、理事死亡時に相続税が課税されることになり、今後の実務の方向性を定めることになりました。また、類書も多数出版され、「知識」に関しては横並びとなっています。このような状況の下、改訂版を出版するにあたっては、「なぜ今改訂するのか」を執筆陣で自問自答しました。その答は、実務の最新論点を検討し、これまで積み重ねてきた議論が実務でどのように具体化しているのか。これを筆者の経験・価値観を交えて紹介しようということになりました。自分が実務で直面したらどうするか。常にこの視点で原稿を進めていきました。
(税理士:白井一馬)