建設機械会社が所得隠し=土地売買で2.5億円−名古屋国税局
濱田)少し前のニュースですが、町への寄附認定という話です。
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建設機械会社が所得隠し=土地売買で2.5億円−名古屋国税局
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土地売買の差額が売却損と認められなかったとみられる。
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関係者によると、同社は2005年3月、当時の静岡県引佐町(現浜松市)から、相続税評価額が700万円前後の町有林を2億8000万円で購入。14年1月に3000万円で地元の不動産業者に転売した。差額の2億5000万円を損金計上したが、同国税局は購入額が不当に高く町への寄付に当たると判断したとみられる。
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(2017/06/28-11:53)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017062800532&g=soc
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通常、地方公共団体に対する寄附金は、損金不算入対象外ですよね。
何故、損金算入されないのでしたっけ。
村木)法人税法37条の「(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)」の括弧書きに該当するわけでもないよね、ということですか。
濱田)ええ、町有林の買取りで、その後の転売を考えると。
ちょっと違うよなぁと。
内藤)素直に考えれば良いのでしょう。
寄附の事実認定は、買取りが実施された2005年に生じるのだと思います。
(2005年当時の課税関係)
土地 700万円 /現預金 2億8千万円
寄附金 2億7千
3百万円
高額購入そのものが、寄附だと。
村木)なるほど、転売時には、もはや譲渡原価とすべき土地は、3千万円分しかないのだから、売却収入の殆どが課税されてしまうのだと。
(2014年転売時の課税関係)
現預金 3千万円 / 土地売却収入 3千万円
土地 700万円 / 土地 700万円
譲渡原価
内藤)そうですね。ポイントは、寄附金の損金算入は、2005年に行われるべきものなので、更正の請求期限を徒過しているよね、というところです。
濱田)言われれば、ロジックは納得ですが、びっくりです。
村木)ええ。そうすると、子会社救済の意図での子会社株式増資引受けも、取得価額の否認がされるリスクがあるのでしょうか。
これまでは、課税されてこなかった部分ですが。
内藤)子会社救済の意図での増資は、ビジネスリーズンの世界なので、この事例よりも、事実認定の難しさのハードルが上がりますね。
しかし、常に不可能とまでは言えないような気がします。
村木)更に、理屈だけで言えば、役員からの高額買入も同じですね。例えば、時価1億円の土地を3億円で購入した場合です。
内藤)なるほど。こちらは差額が寄附でなく、役員賞与扱いですから、7年経過後の売却であれば、給与課税がされなかった分だけ、まだマシですか。
村木)時価の問題は、結構厄介ですね。相対取引であれば、市場取引のような価格決定がされるわけではありませんから、時に時価と乖離した取引結果になることもあります。ただ、組織再編関係事件での最近の傾向などを見ていると、それなりに説明できる整理をしておかないと、まずいということですね。
濱田)なるほど。しかし、10年以上前の取引が理由で否認される場合がある、というのは実務的には怖いです。
内藤)そう思います。一種の時限爆弾ですね。ただ、この事例で言えば、これを認めてしまうと、将来、随意に損金を算入させることが可能になり、逃げ得になりますよね。金額も考えて、譲れなかったところなのでしょうね。
村木)納得です。最後は常識感覚というところですね。ただ、取得時に正しい処理をしていれば、本来は損金算入できたわけですね。時価との乖離も大きいですから、取得時の隠れた事情が何かあったのかもしれません。
濱田)そうですね。そう考えるのが素直でしょう。それにしても、税理士としては怖い案件です。
(税理士 村木慎吾 税理士 内藤忠大 税理士・公認会計士 濱田康宏)