東京高裁平成29年2月23日 残波事件控訴審
残波事件の控訴審判決です。
争点の中心は地裁で納税者が負けた役員給与高額否認のみ。
役員退職給与は、一切出てきませんでした。
国側が控訴しなかったから、ということですかね。
で、高裁も地裁判決を超えることは認めませんでした。
予想通りですが、納税者敗訴です。
売上高と役員給与額には相関関係あるし、倍半基準も合理的。
まぁ、当たり前ですね。
役員の能力を判断要素に加えろとの納税者主張も。
恣意的要素を加えることになるではないかと。
類似法人の代表取締役又は取締役の役員給与最高額を超過して。
支払うのが不相当との認定を覆すような経営分析数値もない。
これもまた当たり前ですね。
控訴した割に、ショボ過ぎる主張しかしていない気がします。
役員給与の変遷について、誤認があると主張しましたが。
利益処分役員賞与は、役員対価となる役員報酬とは別でしょと。
当時の理解から言えば、これもまた当然。
また、収益状況悪化を根拠に過大認定はおかしいと主張したのですが。 条文の通りでしょと、一蹴されています。
これは、使用人給与額の変遷を考慮要素にすべきでないとの主張にも。 同様の反論されて終わり。
更に、租税回避事案でないのだからとまで言い出しますが。
そんな解釈持ち出す根拠ないでしょで、これも瞬殺。
納税者の気持ちが唯一分かるのは、予測可能性部分で。
ただ、これも確定額までは不明でも、相応の予測はできたでしょと。
入手可能な資料等から予測しうる額を大幅に上回っていたのだから。
類似法人の役員給与額より大幅に過大と認識可能だったと。
事実、極端に高額だったわけですから、文句は言えません。
ということで、全て棄却で納税者敗訴と。
最高裁に行くのかどうかですが、結論はたぶん変わりませんね。
納税者は諦めずに上告しているかもしれませんが。
地裁判決・高裁判決を確認できた現時点で言えることは。
想像ですが、何故否認が起きたかの主因について。
会社の業績が悪化して、従業員給与を下げたのに。
役員給与を全体的に増額したことが、かなり心証悪かったのだろうと。
つまり、水準をダウトという前に、増額の可否という話がある。
課税庁としても、過去と変わらない状況での否認は勇気要るので。
まずは、増額を客観的に考えるべき環境にあるのか。
その上で、増額改定額の幅をどうするかで、水準を考慮する。
この残波事件では、最初の段階で、増額考えたのが間違いだった。
税理士としての視点で、教訓を探すとすればそうなるでしょうか。
(税理士・公認会計士 濱田康宏)