大阪勉強会からの税法実務情報

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お守りは非収益事業、暦は収益事業(平成31年(2019年)版 宗教法人の税務)

お守りは非収益事業、暦は収益事業(平成31年(2019年)版 宗教法人の税務)


 「収益法人の税務」の平成31年版が出ました。

 今回下記で扱った部分は、もう数年前時点で記述あるのだと思いますが。

 


1 お守り、おみくじ等の販売

 

 お守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質的な喜捨金と認められるような場合のその物品の頒布は、収益事業には該当しません


 しかし、一般の物品販売業者においても販売されているような性質の物品(例えば、絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花、数珠、集印帳、硯墨、文鎮、メダル、楯、ペナント、キーホルダー、杯、杓子、箸、陶器等)を通常の販売価格で販売する場合には、その物品の販売は収益事業(物品販売業)に該当します。

 

 なお、線香やろうそく、供花等の頒布であっても、専ら参詣に当たって神前、仏前等にささげるために下賜するものは、収益事業には該当しません

 

「平成31年(2019年)版 宗教法人の税務」(平成31年1月) 国税庁
「収益事業に該当するかどうかの具体的な判定」(P18)

 

 

 ちなみに、「宗教法人の行う主な事業と消費税の課税、不課税等の一覧表」も収録されており、企業側税務でも、下記部分は役立つでしょうね。

 


イ 葬儀、法要等に伴う収入(戒名料、お布施、玉串料等) 不課税
ロ お守り、お札、おみくじ等の販売           不課税

ハ 絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花等の販売 課税

 

 なんか退職金の手取り計算している巫女さんのイラスト好きです。
 以前から掲載されているのですが。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)
 

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老人ホームに入居中に自宅相続で文書回答

週刊税のしるべ 平成31年1月14日 第3346号

 

 東京国税局は7日、「老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法69条の4)の適用」についての文書回答を公表。

 

 “鐐蠡蛙郵辰蓮∧神29年4月、X有料老人ホームに入居。

 

 被相続人甲は、平成29年6月、X有料老人ホームに入居する直前において居住の用に供していた家屋とその敷地の用に供されていた宅地等を、Y有料老人ホームに入居していた配偶者乙から相続により取得。

 

 H鐐蠡蛙郵辰蓮∧神30年2月、本件家屋に戻ることなく死亡。本件家屋は、被相続人甲がX有料老人ホームに入居した後は、空家となっていた。

 

 と鐐蠡蛙郵辰蓮∋猖瓦垢訌阿僕弉雜酣定を受けていた。

 

 このような事実関係を前提に、本件家屋とその宅地等を長男丙が相続した場合に、小規模宅地の特例の適用が受けられるか否か。

 

【相続関係図】
相続関係図

【時系列】
時系列

 

 続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等が、本件特例の対象となる居住の用に供されていた宅地等に該当するか否かについては、被相続人が有料老人ホーム等に入居等して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判定することとされているが、その時において被相続人が宅地等を所有していたか否かについては、法令上特段の規定は設けられていない。

 

 したがって、本件宅地等は、被相続人甲がX有料老人ホームに入居し居住の用に供されなくなった直前において、被相続人甲の居住の用に供されていたものであることから、その時において被相続人甲が本件宅地等を所有していなかったとしても本件特例の対象となる宅地等に該当すると解され、丙は本件特例の適用を受けることができる。

 

(税理士 岡野 訓)

| - | 07:39 | - | - |
財務調査(デューデリジェンス)を意識した決算・税務申告(税経通信)

財務調査(デューデリジェンス)を意識した決算・税務申告(税経通信)

 

 税経通信2019年2月号より。

 

 「特集1 後継者不在の中小企業の売却」があり。
 2つ目の読むべき記事。

 

○5 財務調査(デューデリジェンス)を意識した決算・税務申告
 大野貴史(公認会計士・税理士)

 

 まず、5期程度の重要科目・増減変動項目の推移分析があるので。
 添付書面なども意識しつつ、作成しておくべきであろうと。

 

 そして、個別注記表などを手抜いている会社があるので。
 会計処理基準の明確化含めて、確認しておきなさいと。

 

 次に勘定科目内訳書周りで、まずは預貯金内訳書の残証とれと。
 まぁ、依頼してもくれない会社はどうしようもないけど、依頼はしますね。

 

 更に、預金口座別の使途を把握しておけと。
 給与口座・支払口座・入金口座などどう管理しているかと。

 

 なるほど、これは税務調査の視点でも大事ですね。

 

 そして、資金の状況で、日次ベースの預金残高の頂点と底を把握せよと。
 日次や月次でのそれも含めて、資金繰り把握には重要ですね、納得。

 

 売上債権については、数年分見れば、取引先が把握できるので。
 特定取引先の額が多い場合、取引条件の問題か滞留がないのか把握をと。

 

 詳細は書きませんが。
 不良債権周りの確認は、DDでは当然に重要なので、この辺はまぁ。

 

 で、監査では年齢調べの手法が使われますが。
 やはりこれを推奨していますね。

 

 更に、滞留債権は回収可能性や交渉書類の文書記録保存の重要性も。
 まぁ、M&A意識しなくても、貸倒処理のためには重要ですし。

 

 仮払金は、まぁ書くまでもないですが。
 貸付金・受取利息は、内容や条件に注意と、まぁこれも当然。

 

 棚卸資産は、評価方法が注記表と違う場合があるので注意と。
 確かに、結構このあたりありますね。

 

 DDでは、滞留在庫の把握などが徹底されると。
 まぁ、当然でしょう。

 

 有価証券は、全て時価評価になると。
 関係会社も時価評価対象なので、相続税評価を把握しておけと。

 

 まぁ、これは毎期やるって大変だろと突っ込んでおきますが。
 あと申告書周りの話もあるが、省略で。

 

 固定資産の内訳書については、面積記入などを適切にと。
 確かに、結構いい加減になっているケースありますね。

 

 土地建物は、毎期固定資産評価額を把握しておくのもよいとあるが。
 課税明細での評価額を意味しているのか、ちょっと意味不明

 

 あと、減価償却の計上見送りが過去にないかあたりは。
 当然のようでも、重要
でしょうね。

 

 買入債務関係は、特定先の残高が大きい場合に。
 支払いを止めているなどがないか注意
というのは、なるほど。

 

 仮受金・預り金などは、仮払金と同じようですが。
 前受金は、振り替え漏れ注意と。

 

 借入金・支払利子は、個人や関係会社からの借入があると。
 M&A後の解消について、視野に入れておくべきと、そりゃそうですね。

 

 売上の事業所別内訳は、ちゃんと作っていればという気がしますが。
 事業概況説明書は、人数把握などにも役立つと。

 

 役員報酬・人件費は、事前確定届出や使用人兼務などの話ですが。
 その他、家族分が買収後受ける影響も確認しておけと、なるほど。

 

 地代家賃は、敷金保証金もセットで確認しておかと。
 雑役・雑損失は、内容的に計上区分正しいかどうかと。

 

 あとは、税法基準以外での検証項目が並びますね。
 一番大事な退職金関係は、もう少し筆を割いて欲しかったけど。

 

 一部、実務目線からは疑問もありましたが、結構勉強になりました。
 流石大野先生。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)

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名古屋局 共同事業要件に該当するための「従業者引継要件」で文書回答
 実務への影響を考えてみれば。

 従業員といったん雇用を終了し退職金を支給することができる。この場合に非適格合併にはならない。

 逆の影響もある。このような手続きで、仮に非適格合併になるならば、含み損資産がある会社は従業員との雇用を打ち切って合併法人が雇用する形式をとれば、非適格で譲渡損が計上できる。それが禁止され強制的に適格合併になるということだ。

 そもそも実務の合併では移転する土地は含み損になっていることの方が多い。「適格合併になる」という取り扱いは優遇措置ではない。たとえば非適格合併だと存続会社の青色欠損金は無傷ですむが、これが適格と認定されたら青色欠損金の使用制限があり得る。非適格合併には適格認定リスクがある。

(税理士:白井一馬)
| - | 12:09 | - | - |
名古屋局 共同事業要件に該当するための「従業者引継要件」で文書回答

週刊税務通信 平成31年1月14日 3539

 

 名古屋国税局は、2018年12月25日、「合併に際し、被合併法人の従業者との雇用契約を終了させ、当該合併後に合併法人において当該従業者を新たに雇用する場合の従業者引継要件の判定」を公表。

 

 照会事案の事実関係は次。

 

 )楫鏐臺擦瞭の前日における被合併法人の従業者81名は、同日付で被合併法人との間の雇用契約を終了するとともに、被合併法人から退職金の支払いを受ける。

 

 被合併法人の従業者81名のうち79名は、本件合併の日において合併法人との間で新たな雇用契約を締結し、同日から合併法人の従業者として業務に従事する。

 

 この場合、従業者引継要件を満たすことが出来るのか。

 

 従業者引継要件は、被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていつことのみ規定。

 

 つまり、被合併法人の従業者の地位が合併法人に承継されることまでは要求していないものと考えられる。

 

 よって、本件は、被合併法人との雇用契約は合併前日に終了するものの、不当解雇等ではなく、被合併法人の従業者81名のうち79名は合併法人との合意のもと新たな雇用契約を締結し、引き続き合併法人の業務に従事することが見込まれていることから、従業者引継要件を満たす。

 

(税理士 岡野 訓)

 

 

| - | 07:50 | - | - |
M&Aの各ステップにおける税理士としてのアドバイス(税経通信)

M&Aの各ステップにおける税理士としてのアドバイス(税経通信)

 

 税経通信2019年2月号より。

 

 「特集1 後継者不在の中小企業の売却」があり。
 3つほど、読むべき原稿があると思いました。

 

 まずは1つ目。

 

○4 M&Aの各ステップにおける税理士としてのアドバイス
 佐武伸(公認会計士・税理士)
 稲川貴法(かえで税理士法人所属)

 

 著者は共にかえでファイナンシャルアドバイザリー所属。
 事前準備、契約締結までのポイントなどを簡単に説明。

 

 まず、事前準備について、非事業用資産の切り分けが必要だと。
 個人的によく聞くのは、車とかですかね。

 

 会社に関係ない個人帰属すべきものがないかを抽出しておく。
 まぁ、この辺はリタイアとセットかどうかもあるかもですが。

 

 組織体制構築の話はおいておいて、少数株主問題も挙げてある。
 真の株主問題含めて、法務上の問題は結構ありそうですね。

 

 次に、案件化前に、経営者に必ず説明し納得させるべき事項があると。
 売却の可能性、売買金額の算定、買い手候補の紹介の3つ。

 

 そして案件化後に、直近の業績が重要であることを伝えろと。
 クロージング前に業績上げないと話がしぼむってことでしょうね。

 

 さて、M&A手続の中では資料概要書作成・簡易評価などの役割があると。
 アピールポイントを見つけておけと、なるほど。

 

 簡易事業評価については、窮境要因を明確化し、解決策提示が重要だと。
 まぁ、改善の見込みがないのに手を出すバカはいないって話ですね。

 

 その他、事業計画・マッチング・面談、条件交渉・基本合意など。
 それぞれで果たすべき役割があると。

 

 で、デューデリジェンスが、会計事務所として特に重要だと。
 そりゃそうですが、もう少し中身の記述が欲しかったかな。

 

 最終契約からクロージングまでは、手取り計算・退職金の話。
 更に、個人保証・担保提供の解消のところまで視野にと。

 

 まぁ、この辺は常識か。
 クロージング後の関わりは、おまけ程度に書いてある。

 

 まぁ、それなりに概要確認する意味はある記事ですが。
 本当の意味での実務上の注意事項が出てないのは、ちょっと不満。

 

 会計事務所として一番大事なことは、利益相反義務への配慮ですよね。
 この原稿では、その話が一切出てこない。

 

 面倒だから書かなかったのかもしれませんが。
 税理士は保険ビジネスやる人も多く、危険なジャンルだとの認識です。

 

 会計士の場合、曲りなりでも利益相反禁止を最初に教育受けますが。
 税理士の場合は、まず、普段は無自覚ですから。

 

 あとは、秘密保持周りもないのですが。
 これは、契約書の稿で書いてくれると期待したのかもしれない。

 

 ということで、この稿が実務上の注意事項を網羅はしていませんが。
 ざっくりと頭の中を整理するのには、参考になるのかなというところ。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)

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会社法改正における取締役等の欠格条項の見直しの動き(金融法務事情)

会社法改正における取締役等の欠格条項の見直しの動き(金融法務事情)

 

 金融法務事情2019年1月10日号より。

 

○リーディング金融法務
 会社法改正における取締役等の欠格条項の見直しの動き
 笠原摩紀(みずほ信託銀行法務・受託審査部法務室)

 

 成年後見人などは、現状、取締役にはなれないこととされている。
 いわゆる、欠格条項というものですね。

 

 これを見直して、心身の故障等の状況を個別的・実質的に審査する
 そのような、成年被後見人等の人権尊重の方向に舵を切る改正が検討中。

 

 うーん、なんか根本のところで間違っている話という気がしますが
 でも、表だって言うと、大批判されるので、何も言えず決まる話なのか。

 

 ただ、そのまま放置してしまうと、融資における役会決議の効力性とか。
 金融機関からすると、恐ろしい事態になりかねないので、どうするか
と。

 

 現時点での改正は、要綱案とりまとめに動いている段階だが。
 就任時には、本人同意を得た上で、成年後見人の就任承諾させたりする。

 

 また、取締役が成年被後見人になった場合、委任終了事由に該当する。
 民法653条3項であり、それ以外の明文規定は置かないと。

 

 ちなみに、被保佐人になっても、その地位を当然に失うわけではないと。
 そのようなバランスがとられた案がまとまりつつあるよと。

 

 著者も書いているように、実際の運用がどうなるかですね。
 それにしてもなぁ……。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)
 

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経過措置について(担当者解説改正相続法の要点[金融法務事情])

経過措置について(担当者解説改正相続法の要点[金融法務事情])

 

 金融法務事情2019年1月10日号より。

 

担当者解説
 改正相続法の要点(4・完)
 −金融実務に関連する項目を中心に−

 堂園幹一郎(法務省民事局民事法制管理官)
 笹井朋昭(法務省民事局参事官)
 神吉康二(法務省民事局付)
 宇野直紀(法務省民事局付)
 倉重龍輔(法務省民事局付)
 満田悟(法務省民事局付)
 秋田純(法務省民事局付)

 

 これで連載完結ですか。
 最後の最後で経過措置規定の話あったので、自分用にメモ。

 

 

例外例1:附則4条 配偶者贈与における持戻し免除推定規定(903条4項)

 贈与又は遺贈がされた時点を基準時とする旧法主義を採用。

 →施行日前に贈与又は遺贈がされた場合、新法の規律は適用されない。

 

例外例2:遺産分割前での裁判所判断なしによる預貯金払戻し(909条の2)

 施行日前に開始した相続についても適用される。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)
 

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「株式交付」という新概念の登場(会社法改正要綱案より)

「株式交付」という新概念の登場(会社法改正要綱案より)

 

 幾つか気になる項目ありました。

 

 (略)

 

2 社外取締役を置くことの義務付け

 

 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,社外取締役を置かなければならないものとする。

 

 (略)

 

第2 株式交付

1 株式交付の内容

 

 株式会社は,株式交付をすることができるものとする。この場合においては,株式交付計画を作成しなければならないものとする。

 

 (注1) 本要綱において,「株式交付」とは,株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。以下第2において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け,当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいうものとする。

 

 (注2) (注1)の法務省令で定めるものは,第2条第3号に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合(会社法施行規則第3条第3項第1号に掲げる場合に限る。)における当該他の会社等とするものとする。

 

 (略)

 

4 会社の登記に関する見直し

(1) 新株予約権に関する登記

 

 (略)

 

(2) 会社の支店の所在地における登記の廃止

 

 第930条から第932条までを削除するものとする。

 

5 取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備

 

 (略)

 

「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(案)」
法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第19回会議(平成31年1月16日)

 

 社外取締役の義務設置は、ほぼ、上場企業限定になりそう。
 ちょっと安心ですか。

 

 株式交付という新用語が出てきましたね。
 なんか、既存の用語と混乱しそうなので、違う用語にして欲しいかも。

 

 会社登記では、支店所在地登記をようやく止めると。
 ネット時代では、本当に意味ない制度になりつつありますからね。

 

 ただ、融資制度や補助・助成制度とリンクしている可能性もある。
 このあたりは、また、いろいろ跳ね返りについて議論あるかも。

 

 取締役欠格条項の話は、最近読みました。
 これはまた別途取り扱う予定。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)

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「資産家やバンカーのコモディティ(大衆)化」(清武英利)

「資産家やバンカーのコモディティ(大衆)化」(清武英利)

 

 なるほど。
 今まさに起きている動きなのですね。

 


国税vs新富裕層「新たな闘い」〜新制度もすり抜ける海外資産
もはや「抜け道」はないはずだったが…

週刊現代 2019年1月14日
清武 英利ノンフィクション作家

 

 (略)

 

プライベートバンカーの従来の顧客といえば、代々の資産家や実業家、地方の名士のほか、IT・土地長者、不動産・パチンコ業者、タレントなどが多く、巨額の絵画やゴルフ場、庭園付きの海外不動産を買い付けたという話もよくあったし、タックスヘイブンに「shell company(抜け殻会社)」を作って、その運用口座を香港やシンガポールに置きたい、という需要も多かった。

 

それがいま、客層や活用目的に異変が起きている。バンカーたちは、SNSを通じて飛んでくる依頼に、業界の敷居がかなり低くなったのではないか、という思いを抱いたという。

 

こうした異変をメガバンクでは、「資産家やバンカーのコモディティ(大衆)化」と呼んで、対応を急いでいる。

 

「かつては剣先のような、一部の方々しか扱っていなかった我々の業務範囲が広がり、お客さんに合わせてどんどん降りていくイメージです」と担当幹部は語る。

 

他にも、バンカーたちを驚かせた依頼がある。東京都内で働く外資系のバンカーは最近、「仮想通貨取引で手持ちのコインが(時価)20億円に暴騰したので、海外に移住して、上手く節税したい」という相談を受けた。

 

依頼者は若者である。別のバンカーには、こんな依頼があった。税逃れを念頭に置いた相談である。

 

「数千万円を投資した仮想通貨が25倍近くになった。利益を確定させる前にシンガポールで運用したい」

 

 (略)

 

コイン長者を送り出した関係者は、次のように証言する。

 

「相談は多いです。20億円もコインで儲けてしまえば、皆さん、節税と海外移住を考えるようです。シンガポールの場合は、法人を作って、そこの社長になり、『ビジネスを展開します』といって申請をすれば、2年更新のEmployment Pass(就労許可)ビザが出ます。

 

ただし、以前に比べると、少し厳しくなったので、『シンガポール以外で』という人には、マレーシアを勧めています

 

マレーシアはlong term visa(長期滞在ビザ)があり、例えば50歳未満であれば、30万リンギット(810万円)を、マレーシアの金融機関に定期預金をすれば、10年間のビザを取れます。フィリピンでも問題ないですね」

 

ちなみに、マレーシア政府観光局も、「最大10年滞在可能な長期滞在ビザを政府が発行」と謳って呼び込みを図っている。

 

海外口座も捕捉
仮想通貨取引のもう一つの特徴は、取引所を自由に変えて口座を開設できることだ。仮想通貨は電子データ上を――――つまり国境を越えて――――流れていく。一部のコイン投資家にとって、それが節税策のもう一つの抜け道になっている。

 

「だからシンガポールであれば、まずそこへ体を移し、日本の税制から外れます。183日が過ぎたところで、その仮想通貨を日本からシンガポールの取引所に移す。

 

それだけ待つのは、一年の半分以上を外国で住んだという証拠になり、日本の『非居住者』と認められる可能性が高くなるためです」(前出のベテランバンカー)

 

ある若者は日本から住民票を抜き、シンガポールに住み始めて6ヵ月過ぎたところで、仮想通貨を全部シンガポールに移した。いつ売っても、そのキャピタルゲインに対する課税はゼロだという。

 

 (略)

 

他にも、コイン投資家から寄せられる相談があるという。

 

「日本に住んだまま、シンガポールか香港のプライベートバンクに口座を開設したい。それで当地の仮想通貨取引所に移して売ったコインの利益を、その口座に入れたら税務申告しないでも済むのではないか?」

 

これは脱税行為である。こうした依頼者は、国税庁が「国際戦略トータルプラン」という名の海外資産逃れ対策を次々と講じ、OECD租税委員会が主導する「自動的(税務)情報交換制度(CRS)」が本格稼働したことを知らないのである。

 

 (略)

 

「私にも時々、相談があるが、日本に住んでいる以上、いくら仮想通貨を海外に移しても海外の銀行に入金した時点で捕捉されるので、カンボジアのようなCRSにまだ参加していない国を利用するか、移住するしか、節税手法はないです。移住した時点で、現地に口座を開設すればCRSの対象から外れますから。

 

ただしいま、タックスヘイブンの活用や、仮想通貨をめぐる節税は、国際的にも厳しい目で見られている。外資系も含め不正が発覚した時には、収益が全部吹っ飛ぶぐらいのペナルティを払わなければならない

 

 (略)

 

さらに出国時課税制度や海外移住者(日本の非居住者)に対する相続・贈与税の5年ルールが10年ルールに延長されたことで、「シンガポールや香港といった税金が安いところに移り住んで資産を残す、つまり、税率の差を利用して残していくという節税行為の費用対効果が少なくなってしまった」(メガバンク担当者)という。

 

このため、海外に流出した富裕層とその資金の流れが止まっているのだという。

 

「資金の逆流がこれから起こるだろう」と予想するメガバンクと、「それでも抜け穴はまだ残っているし、超富裕層は海外を利用するメリットを承知している」という外資や独立系プライベートバンカーの間で、新たな資金争奪戦が繰り広げられている。

 

 (略)

 

「もともと、仮想通貨取引で申告してない人はざらにいるので、私たちは『見せしめが出る』と予想しています。国税庁ではプロジェクトチームを作っているようだし、海外逃避についても放置し続けるとは思えない。国税は見ている。それは危ないんですよ」

 

「週刊現代」2018年11月17日号より

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58573

 

 もしも私が調査官だったとしたら。
 こういうところに「横目調査」に入るための工夫を考えますが。

 

 課税庁は、果たして、実際にはどういう手法を開発するのでしょうね。

 

(税理士・公認会計士 濱田康宏)
 

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